読んだ本


最近は「ファンタジー」というくくりであっても、SFランキングの上位になることはおかしくなくなってきた。
その典型である『奇術師』も、2004年度を代表する海外作品の堂々2位。


内容は、当代を代表する二人の奇術師の攻防
互いに「瞬間移動」の手品をクライマックスとして熾烈に競い合うのだが、
その度合いはエスカレートし、しまいには・・・。


どうかとすると、結構バカみたいな話。
センス・オブ・ワンダーとは、そんなもんなんだろうけど、
同じ作者の『逆転世界』は一発アイデアとはいえ、想像力の飛躍を実感できた素晴らしい作品だった。
アレ並みの感動はなかったけど、『奇術師』も味わい深い内容です。



裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争


裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の

裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の


話の舞台は、架空の現代日本
治安が極度に悪化した国内のあちこちで、政府軍や武装団が跋扈している内乱状態のさなかにある。


父親に死なれ、母親も誘拐されたまま行方知れずの10歳の主人公・佐々木海人(ささきかいと)が、
自分より更に幼い妹と弟を食わすために寝ずに働き、やがて軍に徴兵されるのだった。



三年前にこの人の出世作ハルビン・カフェ』を読んだ時は、マフィアとの抗争、暴力に次ぐ暴力、
底辺で暮らすものたちのあがきといった、よくある「クライム・アクション」っかなあと思ったものの、
その世界にグググッと引き込まれたことをよく覚えている。


ただ今回の『裸者と裸者』は、ハードカバーで2冊はちょっと長ったらしくて、はっきり言って下巻はほとんどいらないんじゃないかと思えるほど。
魅力的なエピソードも多いんだけど、うがった見方をすれば、中南米あたりの貧しい国で現実に起きているシーンを日本に置き換えただけ。


最後のちょっとした部分を除けば、話は概ねハッピーエンド。
すこおし毒が弱いかな、という感想です。